トゥルースの視線 第113回
人工知能とロボットの時代に生きる(2)
- 人工知能時代を生き抜くスキル ―
前回(視線第112回)で、英オックスフォード大学マイケル A. オズボーン准教授の研究により、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、人工知能やロボット等に代替することが可能との推計結果が得られたことをお伝えしました。人工知能時代に生き抜くために必要な教育とは何かを考える上で、どのような能力やスキルがもとめられるかを考える必要があると思います。
脳科学者の茂木健一郎氏は、その著書「人工知能に負けない脳―人間らしく働き続ける5つのスキル」(日本実業出版社2015年8月刊)において、鳥と飛行機が飛ぶ仕組みが異なるように、脳科学的には人工知能の仕組みと脳は全く無関係であるとし、人工知能が発展することは人間の脳のアウトソーシングが行われることになり、それによって自由で人間らしい、創造的な働き方、生き方に変わるチャンスが来る、と述べています。そのためには、人工知能の特徴を把握することによって、私たち人間の脳の活かし方のヒント、人間にしかできない必要な能力、人間の脳でしか伸ばすことができないスキルを見出し、人工知能やロボットに奪われない仕事の付加価値は何か?を考える必要があると言っています。
1.コミュニケーション:「メタ認知」が働くと相手や状況を把握したうえでの適切な判断が可能となる。
2.身体性:「いい無茶ぶり」によるギリギリのハードルを越えた時、神経伝達物質ドーパミンが出る。
3.発想、アイデア:感情論を抜きにして次々と思いつく問題解決力が優れた時代になる。「できない理由よりもできる理由をひとつでも探していく」という発想を持つことが大事。
4.直感、センス:論理的で網羅的、緻密で非常に公平な思考ができる人の方が、かえって直感をうまく使うことができる。
5.イノベーション:ひとりですべてのことを引き受けて何かのイノベーションを生み出すよりも、誰かとコレボレーションしてイノベーションを起こしていく形にシフトしていくだろう。
2010年からSTEM教育を続けている当アカデミーは、まさに「遊びと学びの融合」を、コンストラクショニズムという教育理論に基づき、実践しています。次回は、OECDのプロジェクト「Education2030」に触れたいと思います。