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2012年3月15日木曜日

2012年3月

平成23年度『ICT夢コンテスト』CEC奨励賞受賞
― RISEのICT教育が表彰されました! ―


 ICTとはInformation & Communication Technologyの略で、多くの場合「情報通信技術」と和訳されます。IT(Information Technology)の「情報」に加えて「コミュニケーション」(共同)性が具体的に表現されている点にこの言葉の特徴があります。

  『ICT夢コンテスト』は、財団法人コンピュータ教育開発センター(略称CEC:セック)が主催しています。高度情報化社会に対応したICT基礎力育成及びICT利活用の普及を図ることを目的とし、情報機器及びソフトウェアの利活用による教育の企画や実践のコンテスト。17年間行なわれてきた「マイタウンマップ・コンクール」を、学校の先生のためのコンテストとして継承発展させ、今回が第1回の開催となります。

  158件の応募の応募があり、大賞5件、奨励賞25件、東日本審査員特別賞1件が表彰されました。その内、学校部門が24件と地域部門7件。
RISE科学教育研究会は「サイエンス・キャンプ2011」の活動実績(データロギング活動)をエントリーし、地域部門で「CEC奨励賞」を授与されました。


  去る3月4日(金)・5日(土)東京国際交流館にて、『CEC成果発表会 平成23年度「教育の情報化」推進フォーラム』で表彰式とICT実践事例発表会が行われました。今年のテーマは「多様化するICT環境で学び合おう―すべての子ども、先生、社会人が自主的に!お互いに!―」。2日間で1580名の来場者がありました。

  ICT夢コンテストは次の4点から審査されました。
  ●ICTを効果的に活用しているか (ICTの上手な使い方、模範的)
  ●先進性・独創性があるか (先進的、独創的、新奇性、チャレンジ性、感動的)
  ●広く普及することが見込めるか (波及性、普及性、継続性)
  ●絆が深まったか (連携、チーム力、協同性、協調性、協働学習)


  実践事例の発表はRISE科学教育研究会の代表でもある中島が行いました。「サイエンス・キャンプ2011」で用いた教育用レゴマインドストームで作った実験装置や計測装置は来場者の目を奪い、実演も好評で多くの方々に共感を覚えていただいたようです。

  2003年からロボット教育のカリキュラムと指導法の研究、普及を継続して行い、2005年から始めたデータロギングと野外活動、理科実験、科学工作とを結びつけた「サイエンス・キャンプ」が今回評価されたことは、私共に大きな自信を与えてくれました。本年1月26日にRISE科学教育研究会は『内閣府NPO法人科学技術教育ネットワーク』になりましたが、ICT科学教育のパイオニアとして、さらに強力に活動を進めたく存じます。
  今後の活動にご期待下さい。


 

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世界大会で活躍するロボットを!
― アドバンスⅢ新設&マスターオープン講座2012 ―


ロボカップジュニアの大会は、年々ルールが難しくなりハイレベル化しています。ロボット・サイエンスでは、それに対応するために必要な学習項目の習得と、スキルの向上を計るため、4月より大きくカリキュラムを再編成し、アドバンスⅢを新設すると共に、ロボットマスターオープン講座(RMO講座)をより充実させます。

これまでは、ベーシックⅠ・Ⅱ、アドバンスⅠ・Ⅱの4年カリキュラムでしたが、よりセンサーの性能を活かし、多くの種類のセンサーを使いこなすために5年目となるアドバンスⅢを新設。データロギング機能や各種拡張センサーについて研究をしていきます。またサッカーBやレスキューBの新世代の競技にも挑戦します。
RMO講座は、ロボカップジュニアの世界大会で活躍できるロボットを開発することを目的とし、各チャレンジの各課題に焦点を絞って、ピンポイントでテーマを設定した講座を設けています。新しい知識・技術を講義する「講義形式」、事前に自宅で製作し授業内で講師と検証する「ゼミ形式」、動かす機構を製作する「製作・実践形式」というスタイルをテーマに応じて選び、有効な学習が実現できるように授業をデザインをしています。


  これまでロボカップジュニアOB、都立産技高専OB、工学系大学生ら、専門的な経験や知識を持つ講師スタッフが講座を担当し、RMO受講者はこれまで多くの実績を残してきました。
  サッカーAライトウェイト、オープンウェイト、レスキューAはもちろんのこと、サッカーB、レスキューBを対象の講座も開講。より充実したラインナップにしました。

  RMO講座は、相応の実力があれば、当アカデミーに在籍していない一般の方でも受講することができます。世界に挑戦したい!という高い志を持ったロボカッパーはぜひ参加してみて下さい。

  【授業料】チケット制
  ★マスターチケット10枚綴り…18,900円
    ※アドバンスⅡ・Ⅲ在籍生は割引価格で受講可能
  ・90分授業=2枚(在籍生はチケット1枚or2,100円)
  ・180分授業=4枚(在籍生は2枚or4,200円)
  ※講座内容によって別途教材費が必要


マスター生【ロボカップ2011実績】
  ■トルコ世界大会実績
    ・レスキューAプライマリ
        個別競技…準優勝、4位
        スーパーチーム競技…優勝、3位
    ・レスキューAセカンダリ
        個別競技…8位
        スーパーチーム競技…準優勝

  ■ジャパンオープン2011大阪
    ・サッカーAライトウェイト
        3チームが決勝トーナメント進出
        1チームが8位入賞
    ・レスキューAプライマリ…準優勝、3位
    ・レスキューAセカンダリ…優勝

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★トゥルースの視線(第67回)
― ICT夢コンテスト受賞に寄せて ―
 科学的リテラシーと社会的構成主義

 ICT夢コンテストCEC賞を受賞した『サイエンス・キャンプ2011』の活動概要は、トゥルースの視線第62回をご覧ください。
RISE科学教育研究会の活動は、当アカデミーの教育の延長線上にあります。当アカデミーには、ブロック・サイエンス、ロボット・サイエンス、リトル・ダヴィンチ理数教室の3つのコースがありますが、どれも同じ思想の下に運営しております。それは、「科学的リテラシーの育成」と「社会的構成主義に基づく学び」の提唱と実践です。今回の受賞理由は、そこにあると考えております。

  視線第50回でもご紹介いたしましたが、「科学的リテラシーの育成」には、データロギングは極めて有効な方法だと思います。日本の子供たちは理科実験が大好きで、理科実験教室も盛況なようです。しかし、一方で実験結果を考察する力が不足していることも指摘されています。決められた材料や器具で決められた手順で実験を行い、予定調和的な結果を求める実験を繰り返しても、考察する力を育てることができないのは当然ではないでしょうか?

データロギングは、各種センサーを用いて電子機器でデータを取ることです。この場合、どのようなセンサーを用い、どこに取り付け、どのような間隔でデータを取るか(サンプリング周期)、いつまでデータを取ればいいか(待ち条件) ― プログラムを組む上で実験の手順を考えなければなりません。また、実験データからこの実験は正しく行われたのか、どのような性質や規則性・法則性が導き出せるかを考えなければなりません。しかも、データグラフは数学のグラフのようにきれいなグラフにはなりません。特異点については、考慮すべきなのか、排除すべきなのかの判断も必要となります。①実験の手順を考える→②実験を行ってデータを取る→③データを考察する、というプロセスが重要となります。

当アカデミーの3つのコースではこれとは異なった方法で科学的リテラシー育成の方法を行っておりますが、データロギングはこれを実現できる、ICTを活用した有効な方法の一つだと考えております。 (科学的リテラシーについては、視線第58~61回をご覧ください)

  学力世界一と言われるフィンランドが1990年に教育立国を目指し大教育改革に成功した11の理由の一つに「社会的構成主義」が挙げられています(視線第24回参照)。

  「構成主義」とは、当アカデミーの指導方針である「コンストラクショニズム」の訳です。これは、レゴ教育の父であるシーモア・パパート(マサチューセッツ工科大学メディアラボ名誉教授)が提唱してきた教育理論。要約すると、教育とは知識を与えることではなく、子供たちが自らの活動を通して自分の力で知識を獲得し構築できるように、学習の環境を整えたり、学びのデザインをしたり、自分の力で目標達成できるようにファシリテート(促進)したりすることである、という主張です(視線第2~4回参照)。

では、「社会的」とはどういうことでしょう? 勉強は本来一人でコツコツと行うもの ― これは「個人的な学び」です。「社会的な学び」は、友達や先輩、教師という他者との関わりで学ぶことを意味します。意見を交換したり刺激し合ったりして、子供たちの気付きと発見を積み上げて知恵や知識を高めていく学び方あり、「発達の最近接領域」(視線第44・60回参照)を埋める「協働による学び」なのです。

『サイエンス・キャンプ』では、学年の異なる男女を織り交ぜた3~4名のグループを編成し、2泊3日の期間中、活動や生活のほとんどをこのグループで行います。このことにより濃密な人間関係を築き、協力して何かを行うことの良さやチームワークの大切さを学び取ってもらいます。この点がコンテストでは評価されたのではないかと思います。

  レゴやロボットを教材とした教育が日本の教育現場で理解されるようになるのに苦節10年かかり、データロギングというICT科学教育が評価されたことには、ひとしおの感慨があります。しかし、今回の受賞31件の中に科学技術教育にICTを利用した事例は、私たちの他に大阪の学校が行っているロボット教育しかありませんでした。もっともっと様々な事例があってもいいはずですし、評価され推奨されてもおかしくないものも沢山あるのではないかと思っております。

  日本の科学技術教育の発展に貢献できるよう邁進しなければならない、と改めて身を引き締める思いでおります。