>

2010年7月15日木曜日

2010年7月

ロボカップジュニア2010シンガポール凱旋記
― 3T ROBOT世界一に!連獅子はベストプレゼン賞 ―


去る6月19日(土)~25日(金)、Suntec Singapore International Convention and Exhibition Centreにて、自律型ロボットコンテスト世界大会『RoboCup2010シンガポール』が開催されました。

大学の研究室や企業が参加するメジャー部門では、ロボカップ・サッカー5競技(小型・中型・ヒューマノイド・標準プラットフォーム・シミュレーション)、ロボカップ・レスキュー2競技(実機・シミュレーション)、ロボカップ@ホーム1競技、小~高校生部門ではロボカップ・ジュニア3競技(サッカー・ダンス・レスキュー)が行なわれ、世界約40ヶ国からのチームが参加しました。ジュニアでは、サッカー105チーム、レスキュー60チーム、ダンス65チームが参加。

当アカデミーからは、5月GWに行なわれたジャパンオープンで選抜された、ジュニア部門のレスキューA・プライマリ(中2生以下)に「3T Robot」亀井郁夫君(飯田橋校)、レスキューA・セカンダリ(中3生以上)に「RCX Rescue Team」清水星哉君(日吉校)、ダンス・プライマリ「連獅子」平澤陸君・野村世樹君・柳澤陽君・松村健君・武井勇也君・杉浦史生君(練馬校)が、卒業生ではレスキューBに「Radium」加納誉大君(都立産技高専)が日本代表として参加しました。


ジュニア部門は6月20日(日)~24日(木)のため、19日(土)に成田より生徒、保護者含め22名にて朝出発、25日(金)夕刻、皆無事に帰国しました。出発の際には、これまでロボカップジュニアのみならずいろいろな面でお世話になりました都立産技高専の富永一利教授、ロボカップ部の正顧問である廣井徹麿教授も見送りにいらしていただき、黒木啓之准教授からも激励のお電話をいただきました。成田空港の一室借り切り、簡単な壮行会を行ってから一路シンガポールに向かいました。

結果としては別表の通り、全チームが決勝進出を果たし、2個のクリスタル製の重いトロフィーを持ち帰ることがでました。また、当アカデミー初の世界チャンピオンが現れたのも大きな成果でした。

ジュニアでは子供達の技術レベルの向上が年々著しいためルール改正を毎年繰り返してきましたが、最近は同じ競技の枠内で難易度を上げるには限界があり、競技の形式そのものを変更する過渡期にあります。

サッカーは赤外線を発するボールを使って1チーム2台で対戦する競技です。これまで自陣と敵陣を見分けるグレースケール(白から黒へのグラデーションシート)という紙が床に敷かれていたのですが、これがなくなり本物のサッカーのように緑色の毛の短い絨毯に白でセンターサークルやゴールエリアが描かれるようになったので、方位センサーの装備が必須となりました。

年齢による区分もなくなり、ロボットの重量によって、ライトウェイト・リーグ(1.5kg以下)とオープンウェイト・リーグ(2.5kg以下)に分けられます。これが、従来の形を発展された「サッカーA」で、競技フィールドが壁で囲まれているためボールが競技フィールドから外に出ることはないのですが、昨年新設された「サッカーB」では、この壁が取り払われたためボールが競技フィールド外に出てしまいます。さらに、サッカーA・B共に一方のゴールが青色に、もう一方が黄色に塗られるようになったため、画像認識を行なってゴールの色を判断するロボットも現れています。

レスキューはこれまで、建物の内部に見立てたフィールドを使用して、黒の線をたどりながらロボットが進み(ライントレース)、銀色や緑色のテープで作られた人型が被災者として床に貼られ、被災者を発見して合図を出す、というのが基本的なルールでした。

難易度を上げるために黒い線に切れ目を作ったり、レンガなどの障害物を置いたり、ロボットが踏み越えなければならないスピードバンプを床に設置したり、串などをばら撒いたりしています。さらに、坂(最大傾斜角25°)を上がって2階に上がるのですが、坂の麓の部分からは黒い線がなくなります。しかし、今回からは被災者が床に貼られたシールではなく、銀色に塗られた350mlの缶(重さ150g)が2階に置かれるようになり、これを2階のコーナーに設けられた黒い直角二等辺三角形の避難場所に運ばなければならなくなりました。セカンダリでは避難場所が床から6cmの高さに設けられているので、缶を持ち上げておかなければなりません。これが「レスキューA」です。一方、「レスキューB」は今回の世界大会では試験的に行なわれたのですが、被災者が赤外線を発する熱源であり、これを探すという競技になります。
 


ダンスは音楽に合わせてロボットや脇役の人間が踊るという競技ですが、数年前より複数の審査員によるインタビューと舞台での演技(パフォーマンス)の得点を合計して順位を決定するようになりました。構造・構成、プログラム、センサーの有効な使用、衣装、振り付け、エンターテインメント性など、細かい審査項目が設定されています。

昨年から、ただ音楽に合わせて踊る「ダンス部門」と、ストーリー性のある演技である「シアター部門」に分けられ採点表が異なるようになりました。

今回の世界大会でレスキューAは、20日は調整、21日~23日の3日間で7回の競技を行い、個別チームの成績を競いました。そのうち、プライマリ・セカンダリ各12チームがTOP12として選抜され、24日のスーパーチームの競技に臨みます。個別チーム競技は毎日コースレイアウトが変更され、限られた時間の中で調整を行わなければなりません。

そのような状況の中、プライマリの3T Robotの亀井くんが、7回の競技中5回の競技で満点を記録し見事No.1の座に輝きました。単にプログラムを複雑にするのではなく、無駄の無いよりシンプルなプログラム、動きを目指し、一貫して研究してきたことがもたらした結果だと思います。

今回世界大会出場2回目となるセカンダリのRCX Rescue Teamの清水くんは、毎回、被災者を掴む、持ち上げるなどのパフォーマンスを見せ会場をわかせましたが、残念ながら7位に終わってしまいました。多くの競技でいかに安定した結果を残せるが勝負の分かれ目になりました。

スーパーチームの競技は異なる国の2チームがペアを組み、協力して競技を行ないます。ルールは前日に発表されたため、参加者はロボットの改造やプログラムの変更など四苦八苦し大変な思いをしたようです。黒い線は一切敷かれず、2階からロボットをスタートさせて1階に置かれた被災者に見立てた缶を2階に運んで避難場所に置く、といった内容です。

ダンスでは、初日20日の正午から予約制のインタビュー、ステージ上での練習(10分間)が行なわれ、21日・22日の2日間でパフォーマンスの予選を行なってプライマリTOP14チーム、セカンダリTOP11チームが選出され、23日に決勝が行なわれました。



「連獅子」はTOP14に選抜されたものの、残念ながらBEST3には入れませんでした。しかし、ジャパンオープンまで一所懸命作成していたプレゼンポスターやPower Pointで作成した電子プレゼンを英訳したものが、べストプレゼンテーション賞に選出されました。リーダーが中村勘三郎さんにメールを書き、使用許可を得られた映像を自由に使えたのも功を奏したと思います。

また、23日にスーパーチームの組み合わせが発表され、24日にパフォーマンス審査が行なわれました。ダンスのスーパーチームは異なる3カ国のチームで構成され、お互いのロボットを持ち寄って、新しい演技を創り出して競うものです。

「連獅子」は台湾とインドネシアのチームと一緒に行うことになりました。しかし、23日にはインドネシアのチームは帰ってしまったようで、台湾のチームと演技プランを相談することに。お互い英語もよく分からず言葉の壁があり、生徒同士の意思疎通がとても難しかったのが実情です。24日にはインドネシアのチームも来たので、なんとか3チームで出場することができましたが、前日夜10:30まで人間の振付を練習していたチームに及ぶ結果を出すことは到底かないませんでした。

しかし、お互いに土産物やお互いが着ていた世界大会用に作ったオリジナルTシャツやポロシャツに全員の名前を書いて交換したり、記念撮影や紙風船で遊んだり、子供達なりの交流ができたように思います。

外は暑くて湿気が多い一方、建物の中は冷房が効き過ぎているという気候の違い、食べ物の違いや言葉の違いなどがある中、皆日本代表として立派に頑張ったと思います。

また、空き時間を見つけて行ったマーライーオンやナイトサファリの観光、ホテルの近くのレゴショップでの買い物、皆で食べた初日と最終日の食事なども楽しい思い出となったのではないでしょうか?

同行したご父母の皆様のご協力があってこそ、無事乗り切れたと思います。改めて心より感謝申し上げます。

参加者の諸君は、この1週間の遠征で休んでしまった学校や受験の勉強を早く取り戻してもらえればと思いますが、世界を相手にしてきた君たちのことですから、この経験で培った自信とプライドを持って、きっと日常生活でも力を発揮できることと信じています。


3月中旬から地区予選が始まったロボカップ2010の活動はこれで終結しました。地区予選、関東大会、ジャパンオープンで悔し涙を流した生徒諸君も、サマーチャレンジに続きロボカップ2011に向けての活動をスタートさせていきましょう。

最新の情報収集、目的にかなった戦略の立案、正しい実験の手順と手法の確立、結果の分析と改良があってこそ、他に秀でるロボットが作り上げられます。自分のできることだけから発想するのではなく、目標とする理想形を目指して日々努力してもらえればと思います。

子供たちが参加できる自律型ロボットコンテストの中で、ロボカップジュニアは世界の教育学者がデザインする唯一のロボットコンテストであり、難易度も最高峰です。今回の世界大会参加で改めて、世界が今求めているPISA型の学力の在り方やその意義を痛感することができました。

ロボットだけでなくブロックのコースでも、その理念を具現した授業を日々実践し続けていきたいと存じます。今後ともよろしくお願いいたします。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


今年の財宝は缶!チームワークでポチを救出せよ!
- サマーチャレンジ2010 -


「Kokohore!-Wanwan VersionⅡ PartⅡ」
今年の財宝は缶!チームワークでポチを救出せよ!!

毎年恒例となった夏のロボコン、サマーチャレンジ。1学期の研究の成果を発表する場として2004年から開催され、今年で7回目となります。RISE科学教育研究会の教室を中心に毎年多くの子どもたちが参加しています。都立産技高専ロボカップ部からも毎年参加チームを出してもらい、ロボットを研究するもの同士の交流、情報交換をできる貴重な学習の場でもあります。

サマーチャレンジでは競技を「Kokohore!-Wanwan(ここほれ-わんわん)」とし、宝探しの名犬ポチという親しみやすいテーマを掲げ、初心者にも参加しやすいロボットコンテストをデザイン、運営してきました。

初級・中級・上級の学年も経験も異なる者同士でチームを編成。上級者はチームをまとめ、後輩たちに知識や技術を伝えていく役割を果たします。また、後輩たちは上級者のロボットコンテストでの姿勢、大会当日の調整方法を間近で見て学ぶことができるのです。

ロボカップの近年のルールの複雑化に対応すべく、多様なミッションを取り入れたVersionⅡを昨年から開催。初心者でも上級者でもそれぞれ経験、レベルに応じた達成感、成功体験を得られるようミッションを設定しています。


今年はロボカップのレスキュー新ルールに合わせ、財宝を缶に変更しています。昨年同様、ロボット同士のコミュニケーションをテーマとしたポチ救出ミッションも設定。今年はどのような方法でミッションをクリアしてくれるか、とても楽しみです。

一般の方々も無料で自由に見学することできます。ぜひ会場に来て、参加者達が真剣に取り組む姿をご覧下さい。

==================================================
サマーチャレンジ2010【開催概要】
■開 催 日:8月29日(日) 9:00~5:00(予定)
■開催場所:東京都立産業技術高等専門学校
           品川キャンパス 2F 中央ホール
           http://www.metro-cit.ac.jp/index.html
■公式ルール:RISE科学教育研究会ホームページにて公開
           http://www.rise-j.net/
★見学自由(無料)。ぜひ会場に応援に来て下さい。
==================================================


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



実験する方法と結果の分析方法を確立しよう!
― 科学アカデミー授業報告 ―


科学アカデミーのエレメンタリ(小1~小3)の1学期は、「液体をいろいろな角度から探ろう」というテーマで「液体の体験」(通信5月号参照)、「人間データロギング」、「シャボン玉を科学する」という3つの活動を行いました。

 「人間データロギング」では、2学期以降デジタル機器で行なうデータロギングの導入として、チリメンジャコに混じっている様々生物(イカやカニ、エビの幼生など)を分類し、数量を表や棒グラフで表し比較したり、水の三態(固体・液体・気体)の温度変化、水以外の食塩水などの液体を使った沸点上昇、凝固点降下などの実験の実験結果を折れ線グラフにまとめて結果を分析したりしました(最後は食塩の使った寒剤を使用してシャーベットを作って食べるというオマケも)。棒グラフ、折れ線グラフのそれぞれの特性、利用方法についても考えることができました。


どちらの活動も人間が数えたり、温度計を読み取ったりして記録する方法です。この手間のかかる経験があるとデジタル機器の便利さにも気付くことができます。また、それ以上に重要なことは、実験手法の考察やデータ分析により時間がかけられるということです。

 「シャボン玉を科学する」では、生徒自身がシャボン液の配合物や配合の比率を考えて壊れにくいシャボン玉を作ったり、膨らませる器具によるシャボン玉の違い、シャボン玉の大きさの計測の仕方を考えるなどの活動を行いました。


 毎回の授業で眼を輝かせて取り組んでいます。「次はこうしてみようよ!」と自ら発言、提案する姿、お迎えにきたご父母の皆様に、「今日はね!」と楽しそうに話す様子を見て、ペーパー上で知る知識ではなく、自ら実体験したことは子どもたちの印象に強く残ること、子どもたちは常に学びの欲求、好奇心を持っていることを実感させられました。