トゥルースの授業が広がっていく!
―都立高校、保育園でも授業を展開中! ―
これまでも学校や幼稚園、科学館などで、トゥルースの特別授業を紹介してきました。体験型学習(ハンズオン)しながら科学する心、問題解決力を育成する授業を普及するため、当アカデミーの授業は教室を飛び出し、様々な場所へと出張しています。
この5月から品川区立伊藤保育園(西大井)で、年中・年長対象に科学プログラムを実施。これまでも様々な科学遊びを取り入れている園ですが、今回当アカデミーが提供するのは、1年を通しての継続的な科学活動です。「四季のお天気観察」をテーマに取り組んでいます。園という定点観測するのに最適な環境で、日々天気と気温を記録し、季節ごとに特徴的な気象現象について観察・実験・工作などを行っています。
今年4月、10番目の都内最後の総合高校として新設された東京都立王子総合高校(西巣鴨)。まだ、第1期である1年生しかいない新鮮な学校です。基本的な科目の他に特色あるコースとして、メディア・ネットワーク系列、ビジネス・コミュニケーション系列、工業デザイン系列、電灯文化・工業系列、スポーツ・健康系列が設けられています。1年次の前期ではすべての系列を体験し、後期には2つの系列に絞って体験学習、2年次から専門系列を絞ります。当アカデミーはメディア・ネットワーク系列を担当。テーマは「人間と技術と環境」。レゴ教材やレゴ教育用マインドストームNXTを使用しながら、このテーマに追究する授業を展開しています。大震災以来、切実となっている「人間と技術と環境」の複雑で微妙な問題を考えることを目標に、模索しながら授業を進めています。
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サマーチャレンジ2011中級・上級競技紹介
―サッカーAオープンウェイトフィールド、レスキュー・スーパーチーム競技に挑戦! ―
RISE科学教育研究会では、毎年恒例となった夏のロボットコンテスト、サマーチャレンジを今年も開催いたします。今年で7回目となるサマーチャレンジは、RISE科学教育研究会の教室の生徒を中心に多くの参加者が参加しています。昨年は32チーム、98名が参加しました。
今年はロボカップジュニア関東ブロック大会が12月末開催と時期が早まったことを受け、中級~上級者を対象にロボカップジュニア競技にモチーフにした「サッカー」「レスキュー」競技を行います。初級者対象には、引き続きKokohore!-Wanwanを実施します(詳しくは来月号にてご紹介)。
「サッカーチャレンジ」は、サッカーAオープンウェイトで使用されているフィールドを使った競技を実施。サッカーAライトウェイトで使用される「グレースケール(陣地判断のヒントとなる黒から白のグラデーションシート)」が無い中で、敵陣・自陣ゴールの見極め方法の課題に取り組んでもらいたいと思います。
レスキュー」では、世界大会同様、2台のロボットがチームを編成するスーパーチームでの競技を行います。ロボカップジュニアのテーマの1つである「チームでのプロジェクト学習」として本来あるべき、ロボット2台での競技をこのサマーチャレンジから提唱していきたいと思います。
また、両チャレンジともチームは大会当日、くじ引きによって編成します。大会当日でのチームメンバー間でのコミュニケーション能力やチームワーク力が試されます。
2チーム2台のロボットでマルチチームを編成。被災者はアルミホイルが巻かれた缶で、2階と1階の2部屋目に一つずつ置かれます。被災者をどのように検知し、避難場所までどのような方法で運ぶかがポイント。また、チームでの役割分担も大切な要素です。
【サマーチャレンジ2011サッカー競技紹介】
サッカーAオープンウエイト、サッカーBの入門競技として行います。フィールドはグリーンカーペットを使用。相手のゴール、自分のゴールをどのように見分けるかがポイント。自律型ロボット2対2で行い、ボールは赤外線ボールを使用します。
サッカーAオープンウエイト、サッカーBの入門競技として行います。フィールドはグリーンカーペットを使用。相手のゴール、自分のゴールをどのように見分けるかがポイント。自律型ロボット2対2で行い、ボールは赤外線ボールを使用します。
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トゥルース・アカデミー2011夏
―未来の科学者として“考える”夏に! ―
先月から「夏期特別授業」のご案内をしています。今年も工作活動を中心にラインナップしました。
新しい試みとしては、「宇宙エレベーター」講座。実際に研究されている未来プロジェクトについて知り、秋に行われる競技会にも是非参加して欲しいと願っています。未来の研究を引き継ぐ大切な活動です。
そのほかエネルギーについて研究する活動を、サマーキャンプや夏期特別授業「エコハウス」、「マグネシウム燃料電池カー」など、様々なところで実施しています。日本が抱えている重要な問題を、子どもたちも共に考えるきっかけになればと思っています。
また、ロボット講座も多数行います。ロボットという科学に欠かせない学習素材を、この夏の機会にぜひ体験しておきましょう!
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★トゥルースの視線(第61回)★
―科学的リテラシー④「有能な他者」と「足場つくり」 ―
科学リテラシーを育てるには「メタ認知」に基づいた理科学習を進めることが必要であり、そのためには「発達の最近接領域」に当てはまる課題設定が必要であることを、これまでお話してきました。今回は、問題意識や見通し、目的意識を観察・実験についての質の高い考察へと変容させていく、『発達の最近接領域に基づく足場つくり』についてご紹介したいと思います。
ヴィゴツキーは「発達の最近接領域」によって、子どもが独力でできる問題解決だけではなく、大人あるいは仲間との協同的な問題解決の存在を提起しました。これは、個人レベルの学習だけではなく社会レベルの学習が、子どもの認識を変容させる状況を作りだすことを意味しています。森本信也氏は、子どもの認識を変容させる社会的レベルの存在を「有能な他者」と呼び、教科書、インターネット、教師の助言、仲間の意見、観察・実験器具など多様に存在することを指摘しています。そして問題は、こうした情報群を子どもにとって「有能な他者」として認識させ、彼らに積極的に情報の引き出しを図らせるかであり、その方略が検討されなければならない、と。
こうした方略をブルーナーは「足場つくり(scaffolding)」と名付け、その機能を次のようにまとめています。
(1)学習課題に対する興味を喚起する。
(2)子どもが問題解決を必要とされるプロセスについて見通しや目的意識を持てるようにするために、課題を単純化し、問題解決に至る段階を少なくする。
(3)動機づけや学習活動の方向付けをすることにより、学習目標到達への追究意欲を維持するようにする。
(4)子どもの問題解決内容と望ましい到達点とのズレを常に明確化する。
(5)子どもが問題解決に失敗し、落胆する気持ちをコントロールする。
(6)子どもに問題解決の進行と共に、その時点で望ましい到達点を示す。
このような「足場つくり」すなわち授業展開ができれば、子どもは教師のちょっとしたヒントやアドバイスを聞き逃すこともなく、他のお友達のつぶやきにも耳を傾けます。そして、これまで学んだ知識の中から活用できるものを懸命に引き出そうともします。子どもが何か解決に向けてのきっかけをつかんだ時に、なぜか皆「いいこと思いついた!」と目を輝かせます。
しかし、一方的に知識を与える授業とは異なり、このような授業展開は教師にとっては難易度の高い指導力が要求されます。年齢によってもクラスによっても個人によっても、状況は千差万別だからです。授業の導入で興味や関心を喚起し、問題解決に向けて諦めることなく根気よく試行錯誤を繰り返すように促し、自分の力で成し遂げたという達成感を味わってもらうには、やはり一筋縄ではいきません。
問題解決を果たしたときの達成感こそが次の課題にチャレンジする意欲を生み出し、自然に自分の力で学力を伸ばしていくという、理想的な学力向上を実現することができるのです。
【参考資料】
『子どもの科学的リテラシー形成を目指した生活科・理科授業の開発』
(森本信也・横浜国立大学理科教育学研究会 編著)
ヴィゴツキーは「発達の最近接領域」によって、子どもが独力でできる問題解決だけではなく、大人あるいは仲間との協同的な問題解決の存在を提起しました。これは、個人レベルの学習だけではなく社会レベルの学習が、子どもの認識を変容させる状況を作りだすことを意味しています。森本信也氏は、子どもの認識を変容させる社会的レベルの存在を「有能な他者」と呼び、教科書、インターネット、教師の助言、仲間の意見、観察・実験器具など多様に存在することを指摘しています。そして問題は、こうした情報群を子どもにとって「有能な他者」として認識させ、彼らに積極的に情報の引き出しを図らせるかであり、その方略が検討されなければならない、と。
こうした方略をブルーナーは「足場つくり(scaffolding)」と名付け、その機能を次のようにまとめています。
(1)学習課題に対する興味を喚起する。
(2)子どもが問題解決を必要とされるプロセスについて見通しや目的意識を持てるようにするために、課題を単純化し、問題解決に至る段階を少なくする。
(3)動機づけや学習活動の方向付けをすることにより、学習目標到達への追究意欲を維持するようにする。
(4)子どもの問題解決内容と望ましい到達点とのズレを常に明確化する。
(5)子どもが問題解決に失敗し、落胆する気持ちをコントロールする。
(6)子どもに問題解決の進行と共に、その時点で望ましい到達点を示す。
このような「足場つくり」すなわち授業展開ができれば、子どもは教師のちょっとしたヒントやアドバイスを聞き逃すこともなく、他のお友達のつぶやきにも耳を傾けます。そして、これまで学んだ知識の中から活用できるものを懸命に引き出そうともします。子どもが何か解決に向けてのきっかけをつかんだ時に、なぜか皆「いいこと思いついた!」と目を輝かせます。
しかし、一方的に知識を与える授業とは異なり、このような授業展開は教師にとっては難易度の高い指導力が要求されます。年齢によってもクラスによっても個人によっても、状況は千差万別だからです。授業の導入で興味や関心を喚起し、問題解決に向けて諦めることなく根気よく試行錯誤を繰り返すように促し、自分の力で成し遂げたという達成感を味わってもらうには、やはり一筋縄ではいきません。
問題解決を果たしたときの達成感こそが次の課題にチャレンジする意欲を生み出し、自然に自分の力で学力を伸ばしていくという、理想的な学力向上を実現することができるのです。
【参考資料】
『子どもの科学的リテラシー形成を目指した生活科・理科授業の開発』
(森本信也・横浜国立大学理科教育学研究会 編著)