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2019年7月9日火曜日

ロボカップ2019シドニー世界大会報告

 ~ 目覚ましい技術レベルの向上 ~pallas、シドニー世界大会出場へ!

Robo Cup 2019
オペラハウス

冬のシドニーにて「RoboCup2019 Sydney, Australia」が開催されました。メジャー(成人の部門)のサッカー、レスキュー、@Home、Logisticsに加え、ジュニア(19歳以下の部門)のサッカー、レスキュー、OnStage、全3部門7競技が行われました。

Truthからはジュニア・レスキューMaze競技の「pallas」(パラス)が出場。大会2週間前に出場が決まり、慌ただしく準備し、4泊7日という強行日程で参戦しました。レスキューMazeの競技は、壁に仕切られた迷路をロボットが進み、被災者に見立てた熱源を発見し、知らせるとともに救援キットをその近くに置くというものです。熱源とは別の被災者として、壁に3種類のアルファベットが書かれており、これはトリアージされた被災者の状態を示しています。その状態に応じて決められた数の救援キットを置かなければなりません。カメラを搭載して画像処理を行う必要があります。また、迷路には坂があったり様々な形状の障害物が置かれたり、床に串などがばらまかれたりしており、それらの障害を克服してロボットは進まなければなりません。そして、スタート地点に戻ってくると高得点が得られます。ロボットが進みながら迷路の地図を作成するマッピングの技術が要求となります。優勝したクロアチアのチームは、レザーを360度回転させる距離センサーを搭載し、自動的にマッピングさせるという技術を使っていました。

pallas
pallas

pallasは、自分のロボットの一歩前に仮想の分身ロボットを走らせ、その仮想ロボットが発見した被災者に対して、後から来た実際のロボットが再確認してアクションする、という複雑なプログラムを組んでいました。しかし、チームメンバーの一人は国立東京高専(八王子市)で寮生活、もう一人も今年四月に入学した国立長岡高専(新潟県)で寮生活であり、また出場が決まったのが直前だったこともあって、ロボットの改良や調整のための時間がなかなか取れませんでした。競技は1日目と2日目が3回、3日目が2回の計8回。内7回の合計点で順位が決まります。毎回の競技後に改善点と改善目標を設定して取り組みました。個別チームの結果は、28チーム中15位。

世界大会では、最終日に他国のチームと組んで行う「スーパーチーム方式」での競技があります。個別チーム成績4位の中国チームと組みました。前日にルールが発表されます。2チームはとても仲良くなり、午後8時まで会場で戦略についての打合せや調整、その後もLineで夜遅くまで意見交換していました。pallasのロボットの調子は日々良くなってきて2回の競技では活躍したのですが、中国チームの調子が優れず、惜しくも4位でした。

スーパーチームでは中国と

サッカー・ライトウェイトでは、日本から出場した2チームが予選と決勝で対戦し、大いに盛り上がりました。結果は2位と3位。このリーグでは作りをシンプルにしたロボットが増えてきたようです。目を見張ったのは、OnStage アドバンスト部門でした。経験者を対象にしたチームですが、全方位に動けるオムにホイールやメカナムホイールの使用やレゴマインドストームEV3とArduino(アルデュイーノ)の融合は当たり前で、カメラを搭載した画像処理、AI技術の導入など、その技術の高さには驚かされました。レベルが一気に上がった感があります。特に目を引いたのは、ロシアチームが作った等身大の女性ロボット。コンプレッサーで空気を送り込み、指1本1本を制御して実際に笛を吹きながら移動するロボットです。ステージ上だけではなく、会場の通路でも正確に笛を吹きながら観客に囲まれながら移動していました。

アドバンスト部門 ”笛を吹くロボット”

メジャーの部門では、家庭の中で人間とロボットがコミュケーションを取り共同作業を行う課題に取り組む「@Home(アットホーム)」では画像認識、音声認識、動作の精度がかなり進化したように思います。災害後の街を模したフィールドで被災者を発見する「レスキュー実機リーグ」の会場には、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州警察のレスキューと爆弾処理を行うロボットが展示され、フィールドでの実演も行われていました。競技の難易度も上がっているようです。特に興味を持ったのは、ヒューマノイド(人間型)のサッカーです。これまであまり進化を感じなかったのですが、既製のロボット「ナノ」を使った標準プラットフォームリーグと小型のキッズサイズリーグでは、まだまだ人間とサッカーするには程遠いのですが、サッカーの形に近づいているのを感じました。

世界大会は調整日を含めて5日間、毎回の競技で問題点とその原因を発見し、次の競技までに修正し調整する、という作業の連続です。また、同じ競技に参加した玉川学園のチームやスーパーチームを組んだ中国チーム、調整の合間やジュニアパーティーで交流した諸外国のチームとの交流もありました。今後の人生にとても意義ある、しかも強烈な体験ができたと思います。この経験を糧にさらに大きく羽ばたいてほしいと願っています。


■サッカー中型リーグの映像

https://www.youtube.com/watch?v=_Y5_iGxWFrQ&feature=share


■サッカー標準プットフォームの映像

https://www.youtube.com/watch?v=4_BWQl91p9Y&feature=share


ロボカップ2019シドニー世界大会
https://2019.robocup.org/